睡眠時無呼吸症候群とコロナウイルス感染症
2020年9月に、アメリカ・ノースウェスタン大学のマシュー・B・マース教授らが、寝ているときに大きないびきをかき一瞬呼吸が止まる閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の人は、そうではない人と比べ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に罹患するリスクが8倍高く、そのうえ、呼吸不全など重症化するリスクが2倍になることを報告しました(Sleep Breath. 2020 Sep;29:1–3.)。また、2021年5月14〜19日に開催された米国胸部学会(American Thoracic Society)にて、未治療の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の人は新型コロナの感染リスクが高く、無呼吸低呼吸指数(AHI)をもとにした重症度が高いほど新型コロナウイルス感染リスクが高まり、一方で、十分にCPAPによる治療が行われているほど、新型コロナウイルス感染リスクが減少することが報告されました(ATS 2021,203.1_MeetingAbstracts.A1108)。
具体的には、調査対象の平均年齢54歳の81,932名のうち、1,493人(1.8%)が新型コロナに感染(陽性判定)、224名(0.3%)が入院、61人(0.07%)が重症のため集中治療室での治療あるいは死亡していますが、睡眠時無呼吸症候群(OSAS)ではない人の感染率は1.7%であったのに対し、未治療の軽症〜中等症の睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では2.0%、未治療の重症(AHI>30)の睡眠時無呼吸症候群(OSAS)では2.4%というように重症なほど新型コロナ感染リスクが高いという結果でした。一方、いびきを伴う睡眠時無呼吸症候群(OSAS)でCPAP治療を受けている人の新型コロナ感染率は1.4%で、うちわけとして、一晩にCPAPの装着時間が2〜4時間の人の新型コロナ感染率は1.7%、一晩にCPAPを4時間以上装着できている人の新型コロナ感染率は1.3%と、CPAPによって十分に治療が行えると閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)ではない人とほぼ同等の感染リスクまで改善するという結果でした。
このように、いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の方は新型コロナに感染するリスクが高く、重症なほどリスクが高まる一方、十分にCPAPによる治療が行えていれば新型コロナに感染するリスクが閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)ではない人と同レベルのリスクまで改善する可能性が報告されました。
このようなこともあり、いびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、新型コロナワクチン接種において、接種優先対象となる基礎疾患として扱われています。
未治療の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は、新型コロナ感染だけでなく、高血圧や糖尿病、高脂血症などの生活習慣病、それに伴う脳梗塞や心筋梗塞、認知症のリスクを高めるという報告もあります。これらの病気を予防するためにも、適切な動作条件(適正圧設定・呼吸リリーフ設定・加湿加温設定など)・適切なCPAPマスク(鼻マスクタイプ、鼻孔タイプ、フルフェイスタイプなど)で安定したCPAP治療を睡眠障害の専門医療機関で受けることが大切です。
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参照)睡眠時無呼吸症候群とは