睡眠時無呼吸症候群

いびき・睡眠時無呼吸症候群

睡眠時無呼吸症候群とは

睡眠時無呼吸症候群とは

 閉塞性睡眠時無呼吸症候群とは、寝ているときに大きないびきをかき、突然、呼吸が10秒以上止まったり、呼吸する力が半分以下になってしまうことで、眠りの質の悪化や生活習慣病や心筋梗塞や脳梗塞などの虚血性疾患の悪化・発症に悪影響をあたえることのある病気です。通常、呼吸が止まる直前や呼吸再開後に大きないびきを伴います。

 また、アメリカ・ノースウェスタン大学のマシュー・B・マース教授らの研究によると、大きないびきを伴う閉塞性睡眠時無呼吸症候群の人は、新型コロナウイルスに感染するリスクが約8倍、重症化リスクは2倍になると報告されています(Maas MB et al. Sleep Breath. 2020 Sep;29:1–3.)。

 さらに未治療の睡眠時無呼吸症候群は、認知症の発症リスクが2.4倍高くなるという報告もあります(Yaffe K et al. JAMA. 2011;306(6):613-619)。


「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の診断

 睡眠中に1時間に5回以上の10秒以上の呼吸停止や低呼吸状態が、PSG精密検査あるいは在宅簡易検査で確認された場合、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の診断になります。

 当クリニックでは、検査室外睡眠検査(Out-of-center sleep test:OCST、在宅簡易検査)として、指先に付けるUPATプローブと胸に付けるいびき・体位センサーを利用したPhilips-Respironics社のウォッチパット・ユニファイドを使っています。ウォッチパット・ユニファイドは鼻にセンサーを付ける必要がない在宅簡易検査なので、マウスピースやCPAP治療開始後、マウスピースやCPAPを装着したまま、閉塞性睡眠時無呼吸症候群の治療・改善効果も自宅で確認することもできます。

ウォッチパット・ユニファイド①
ウォッチパット・ユニファイド②

睡眠時無呼吸症候群の厳密な診断基準

 睡眠障害国際分類第3版(ICSD-3)基準では、一泊の泊まりの検査(polysomnography:PSG)、あるいは検査室外睡眠検査(Out-of-center sleep test:OCST、在宅簡易検査)で、
 >PSGでは睡眠時間1時間あたり、
 >OCSTでは検査時間1時間あたりで、
5回以上の無呼吸・低呼吸などの呼吸イベントを認めることに加えて、
以下の症状、
1)眠気や爽快感の無い睡眠、疲労感、不眠症状
2)呼吸困難感などで覚醒
3)ベッドパートナーなどから、睡眠中の習慣的ないびき・無呼吸を指摘される
4)高血圧、冠動脈疾患(狭心症・心筋梗塞)、脳血管障害、うっ血性心不全、心房細動、2型糖尿病、気分障害(うつ)、認知機能障害の診断のいずれか1つでも認めた場合、

 あるいは、1)〜4)の症状が無くても、PSG精密検査では睡眠時間1時間あたり、在宅簡易検査では検査時間1時間あたりで、15回以上の無呼吸・低呼吸などの呼吸イベントを認める

ことで、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群」の診断になります。

 ただし、保険適応での治療方針を決定するためには、在宅簡易検査(OCST)で呼吸イベント(無呼吸・低呼吸)が40回/時間未満の場合は、PSG精密検査を行うことが必要です。

 在宅簡易検査で呼吸イベントが40回/時間以上の場合、保険適応でCPAPによる治療を開始できますが、PSG精密検査でより詳細に呼吸イベントの特徴(眠りの深さや寝相体位での変化)を見極めることが推奨されています。

 なお、いびきだけで、PSG精密検査や在宅簡易検査(OCST)で無呼吸・低呼吸イベントを認めない「単純性いびき」の場合は、保険適応での治療対象にはなりません。

確定診断当日にCPAP治療の開始が可能

 当クリニックが導入しているCPAPは、専用無線通信回線による暗号化クラウド型データ管理システムを導入していますので、来院時にCPAPに挿入されているデータカードやUSBスティックを持参する必要はありません。そのため、仕事の合間や早めに帰宅できたときなど、ネット予約システムで再診予約して受診して頂いても、CPAPの使用状況の確認・評価が可能です。もちろん、使用状況の確認・評価の結果、CPAPの処方設定変更やマスクの変更が必要と判断された場合も、受診日の夜から、新たな設定・マスクでのCPAP治療が可能(Philips社DreamStationのみ当日変更可能)です。

簡易検査

・自宅で行う簡易検査器(ウォッチパット・ユニファイド)をお返しにこられたその日に、結果をお伝えできます(15分程度お待ち頂きます)。
※お仕事などのスケジュールに合わせて、検査器の返却日と結果説明の日を、別の日に行うこともできます。

・簡易検査の結果
●「睡眠時無呼吸症候群の疑い」(pAHIが40回/時間未満)の場合、一泊の精密検査(終夜PSG検査)あるいは在宅終夜PSG検査を行って、治療の必要性の有無を確認します。
●「睡眠時無呼吸症候群」の診断(pAHIが40回/時間以上)の場合、CPAPによる保険適応での治療となります。原則、当日からCPAP治療を開始できます。

 

精密検査(終夜PSG検査)

・終夜PSG検査は、精度の高い入院検査と、自宅で行う在宅終夜PSG検査が可能です。

・一泊入院での終夜PSG検査は、眠っているときの姿勢や眠りの深さによる無呼吸・低呼吸イベントの違いや、無呼吸・低呼吸による眠りの質への影響を詳細に評価した上で、患者さまに最適と思われる設定でCPAPを処方します。

在宅終夜PSG検査は、検査セットをご自宅に郵送し、ご自身で検査装置を装着、検査セットを返送していただきます。

・より細かなCPAPの設定が必要と判断された場合、「CPAP titlation PSG」という、一泊入院にてCPAPを装着した状態での終夜PSG検査を行い、熟練した技師の評価をもとにCPAPの設定の微調整を行うこともあります(睡眠総合ケアクリニック代々木に依頼)。

【院長の「睡眠時無呼吸症候群」に関する業績】

医学系雑誌

  • 中村真樹、井上雄一:睡眠時無呼吸症候群、心療内科,12(5):361-368,2008
  • 中村真樹、井上雄一:睡眠時無呼吸症候群と睡眠薬、精神科治療学,24(7):27-833,2009
  • 中村真樹、井上雄一:睡眠時無呼吸治療の実際、メディカル朝日41(3):22-24,2012

論文(共著含む)

  • Nakamura M, Yanagihara M, Matsui K, Kobayashi M, Inoue Y: Brain microstructural alterations in patients with severe obstructive sleep apnea: a preliminary diffusion tensor imaging study. Sleep and Biological Rhythms, 2017(online 28 Jul 2017)
  • Kobayashi M, Namba K, Tsuiki S, Nakamura M, Hayashi M, Mieno Y, Imizu H, Yoshikawa A, Sakakibara H, Inoue Y. Validity of sheet-type portable monitoring device for screening obstructive sleep apnea syndrome. Sleep Breath 2013; 17(2):589-95
  • 井上雄一(分担研究者)、中村真樹、駒田陽子、難波一義、小林美奈、對木悟:分担研究報告書 パニック障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群合併例における鼻腔持続陽圧呼吸療法のパニック症状に対する効果。厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学事業)精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究 平成20年度総括研究報告書、pp.81-87,2008

学会発表(共演含む)・学会講演

  • 小林美奈、難波一義、中村真樹、對木悟、井上雄一:閉塞型睡眠時無呼吸症候群スクリーニングにおけるマット型無呼吸計測装置(SD-101)の有用性、第34回日本睡眠学会、大阪(2009.10)
  • 中村真樹、望月芳子、浅岡章一、西田慎吾、伊藤永喜、高江洲義和、植木洋一郎、林田健一、井上雄一:重度閉塞性睡眠時無呼吸症候群の注意・意欲障害、第37回日本睡眠学会、東京(2012.6.28)
  • 小林美奈、難波一義、西田慎吾、伊藤永喜、中村真樹、對木悟、井上雄一:日本人男性における睡眠時無呼吸患者の予測に有効な身体的所見は何か、第37回日本睡眠学会、東京(2012.6.28)
  • 中村真樹、望月芳子、浅岡章一、西田慎吾、伊藤永喜、高江洲義和、植木洋一郎、林田健一、井上雄一:重度閉塞性睡眠時無呼吸症候群の臨床所見と脳微細構造異常の関連、第38回日本睡眠学会、秋田(2013.6.28)
  • 小林美奈、伊藤永喜、栁原万里子、中村真樹、對木悟、井上雄一:日本人男性における中等度以上の睡眠時無呼吸患者の予測に有効な身体的所見は何か、第39回日本睡眠学会、徳島(2014.7.2-4)

日本学術振興会科学研究費助成事業

CPAP外来

CPAPとは

 CPAPは、睡眠時に専用の鼻マスクを装着し、適切に加圧した空気で持続的に陽圧をかけ上気道の閉塞部位を押し広げることによって睡眠時の無呼吸・低呼吸や〝いびき〟を軽減させる方法です。
有効性・安全性が高く全世界で最も普及している治療法です。

治療可能な方

 一泊のPSG(Polysomnography)検査あるいは在宅PSG検査でAHI(無呼吸低呼吸指数)が20回/時間以上、あるいは検査室外睡眠検査(Out-of-center sleep test:OCST、自宅での簡易検査)でpAHIが40回/時間以上と診断された場合、保険適応でCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)による治療が行えます(3割の保険負担の場合、月額約5,000円)。

※当院は保険診療機関のため、非保険診療にあたるCPAPの個人輸入を前提としたCPAP機器の処方箋や診断書などの発行はできません。
※ただし、海外転勤などにより、国内での保険適応での治療をやむをえず中断せざるを得ない場合、国内で正規に購入できる許可されたCPAPの購入の相談・対応は可能です。

クラウド型データ管理で、手間なくスピーディに確認が可能

 CPAPの保険適応使用の条件の一つに「原則月1回の受診」があります。従来のCPAP治療機器は、CPAPの使用状況を記録したSDカードやUSBメモリなどの外部メモリを受診時に医療機関に持参して使用状況を確認するものがほとんどで、つい、受診日にこの専用外部メモリを忘れてしまう方もいらっしゃいます。
 そのため、当クリニックでは、CPAP使用のデータ管理に外部メモリを利用せず、専用の通信回線を用いてCPAPの使用状況を確認できる遠隔モニタリングCPAP管理システム(Philips社EncoreAnywhere、TEIJINネムリンク、小池メディカルInfoSmart web)を導入しています。これにより、受診日の忙しい朝に、外部メモリにデータをダウンロードする手間も省け、また、受診予約日でなくても、仕事の合間や帰宅時に時間に余裕ができた際、当クリニックが導入しているWeb再来予約システム、あるいは直接お電話で当日予約(予約変更)して受診して頂ければ、このシステム利用者ならばデータ用外部メモリを持参しなくても診察時にCPAPの使用状況の確認が可能です(このシステムの詳細は、受診時に確認ください。使用されているCPAP機器の変更が必要になることもあります)。

 なお、当院にてCPAP治療開始後、CPAPによる安定した治療が毎月の受診で連続3ヶ月に渡って確認できた場合、その後は最長3ヶ月毎の受診が可能になります(ただし、他の病気の合併や定期的に服薬する必要がある場合は、毎月の受診が必要になります)。

 

CPAPマスクの使用時の煩わしさを軽減

 CPAPのマスクは鼻全体を覆い被せるタイプが多く、眼鏡を使用している方では眼鏡を外さないと装着できない、朝起きたときにマスクの形状の痕が鼻周りに残る、鼻が蒸れるということに悩まされることがあります。これらの問題を軽減した、鼻腔(鼻の穴)だけを覆うタイプのマスクも用意しております(装着できるCPAP機器メーカーが限られています)。

 当院では、はじめてCPAP治療を開始する際に、実際にCPAPマスクを試着していただき、最適なマスク・タイプをご提案します。また、使用中のマスクのサイズが合わないなどの不都合がある場合、再来診察時に最適なマスクを再度ご提案させていただき、原則、当日に交換品をお渡しします(当日お渡しはPhilips社製に限ります)。

【オプションの加湿器装着時】

【オプションの加湿器装着時】

【機器本体のみ】

【機器本体のみ】

鼻腔だけを覆うタイプのCPAPマスク

鼻腔だけを覆うタイプのCPAPマスク

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