ストレス疾患

不安障害とは

不安障害とは
  • 社交不安症(社交不安障害・社交恐怖)
  • パニック症(パニック障害)
  • 広場恐怖症
  • 全般不安症(全般性不安障害)
  • 分離不安症(分離不安障害)
  • 選択性緘黙
  • 限局性恐怖症

このなかでも、社交不安症は1.4%(1,000人に14人)、全般性不安症は1.8%(1,000人に18人)と、この症状に悩む方が多い症状とされています。また、不安障害の多くに不眠症状を伴う事が多く、特にパニック障害や急性ストレス障害では70%の方が不眠や悪夢などを伴うとされています。

米国精神医学会が作成したDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition)では、不安障害は、以下のように分類されています。なお、DSM-5から「不安障害」は「不安症」と呼び方が変更になっています。

このような症状の方はご相談ください

人前や職場・学校で下記の症状があるかた。

  • 強い不安感・緊張感が生じる
  • 緊張のあまり、手が震える・声が震える
  • 動悸・息苦しさが生じる
  • 冷や汗が出る
  • 頭が真っ白になってしまう
  • 胃腸の不快感
  • 下痢

社交不安症(SAD)とは、

「スピーチや発表など、他人の注目・視線を浴びるかもしれない状況において、苦痛を感じるほどの恐れや不安を抱き、それを極力回避しようとすることで日常生活に支障を生じる」疾患です。

このような不安を増強する状況になったときに、

  • 赤面(顔が赤く火照る)
  • 手足の震え
  • 声が震える
  • 発汗
  • 胃腸の不快感、下痢
  • 動悸、呼吸苦感

といった、体の症状(生理的反応)を伴うことが多いです。こういった不安・緊張といった気分の症状や体の症状が原因で、社会生活場面を避けようとしてしまい、不登校や出社拒否、仕事等のパフォーマンスの低下の原因になることもあります。また、このような不安・緊張状態が続くことで「うつ状態」を併発するリスクも高いといわれています。

社交不安症の治療

意識して不安を抑えようとすることで、より不安が強まったり、体の症状が出現したり、不安が生じそうな場面が予想されると不安が生じる(予期不安)という悪循環に陥ることが多いため、最小限の抗不安薬やSSRIによる薬物療法で不安の軽減を行います。不安を感じていた場面やそれが予想される状況下でも不安が生じない、体の症状が生じなくなっても、すぐに服薬を中止はせず、ゆっくりと、時間をかけて服薬量を減らしていきます(漸減療法)。
症状が安定するまでは1〜2週ごとの通院になりますが、症状が改善・安定後は、月1回(4週ごと)の通院も可能です。

全般不安症(GAD)とは、

「仕事や学校など、多くの状況下で、過剰な不安と心配が、6ヶ月以上持続」し、

  • 緊張、過敏
  • 疲れやすい
  • 集中力低下、心の空白感
  • イライラしやすい(易怒性)
  • 肩こりなどの筋肉の緊張
  • 不眠(入眠困難、中途覚醒、熟眠感欠如)

といった6つの症状のうち3つ以上認める、ことを特徴としています。

治療法

社交不安症(SAD)と同様に、必要最小限の抗不安薬・SSRI等で不安の軽減を行います。症状が軽減・改善しても、再発・再燃を予防するために、すぐに服薬を中止はせず、ゆっくりと、時間をかけて服薬量を減らしていきます(漸減療法)。
症状が安定するまでは1〜2週ごとの通院になりますが、症状が改善・安定後は、月1回(4週ごと)の通院も可能です。

パニック障害

パニック症(パニック障害)とは

予期しないパニック発作※が頻繁に生じ、またパニック発作が生じてしまうのではという心配やその誘因と思われる状況を回避しようという行動が1ヶ月以上続いたもの、とされています。一般人口の1〜3%(100人の1〜3人)がこの症状で悩んでいるとされ、決して珍しい病気・症状ではありません。女性、10〜20代に多いとされています。

※パニック発作とは

激しい恐怖・不安感が突然生じ、数分以内に症状がピークに達し、以下の症状の4つ以上を伴います。

  • 動悸
  • 発汗
  • 震え
  • 息切れ感、息苦しさ
  • 窒息感
  • 胸痛、胸部不快感
  • 嘔気、腹部不快感
  • めまい感
  • 寒け、熱感
  • 異常感覚
  • 現実感喪失
  • 「どうかなってしまうのでは?」という恐怖感
  • 死ぬことに対する恐怖

パニック障害の症状

不安・恐怖・緊張感が生じたあとの

  • 動悸や胸中、息苦しさ・窒息感
  • 発汗、寒気、火照り感
  • めまい感
  • 現実感の喪失
  • 症状がどんどんひどくなるのではという恐怖感

1つでも当てはまる場合には、ご相談ください。

広場恐怖症とは

以下に示す5つの状況※のうち、2つ以上の場面で、強い不安感・恐怖感を感じ、パニック症状などが生じたときに「その場から逃げられない、助けてもらえない」と考えてしまい、これらの状況を避けようとしてしまう行動が6ヶ月以上続いたもの、とされています。

※5つの状況

  • バス、電車内など公共交通機関の利用
  • 市場や橋など広い場所
  • 劇場や映画館など(壁などで)囲まれた場所
  • 列に並ぶ、多くの人の中に入る
  • 家の外に1人でいる

治療について

「不安が不安を呼ぶ」状況を回避するため、最小限の抗不安薬・SSRIを定期的あるいは頓服的に服用します。薬により不安を生じにくい状態を維持しながら、少しずつ、不安やパニック症状を感じてしまう苦手とする状況になれる(暴露療法)ようにしていきます。

例)「電車に乗れない」

  • 1第1段階

    • とりあえず、最寄り駅まで行く
    • 空いている時間帯で各駅停車に乗り、一駅でも乗車する
    • 誰かと一緒に電車に乗る
  • 2第2段階

    • やや混んでいる時間に各駅停車に乗る
    • 1人で乗車する

院長の「不安障害・パニック障害」に関する業績】

論文・研究報告書

  • Nakamura M, Sugiura T, Nishida S, Komada Y, Inoue Y: Is nocturnal panic a distinct disease category? Comparison of clinical characteristics among patients with primary nocturnal panic, daytime panic, and coexistence of nocturnal and daytime panic. J Clin Sleep Med 2013; 9(5):461-467
  • 中村真樹、井上雄一:不安障害と睡眠.精神医学,51(7):649-657,2009
  • 中村真樹、井上雄一、不安障害、日本臨床増刊号「最新臨床睡眠学」,645-651,2013
  • 井上雄一(分担研究者)、中村真樹、駒田陽子、難波一義、小林美奈、對木悟:分担研究報告書 パニック障害と閉塞性睡眠時無呼吸症候群合併例における鼻腔持続陽圧呼吸療法のパニック症状に対する効果.厚生労働科学研究費補助金(こころの健康科学事業)精神疾患に合併する睡眠障害の診断・治療の実態把握と睡眠医療の適正化に関する研究 平成20年度総括研究報告書、81-87,2008

学会発表・講演

  • 中村真樹、杉浦健生、駒田陽子、難波一義、尾崎紀夫、井上雄一:パニック障害における夜間睡眠時パニックの臨床的特徴、第1回不安障害学会、東京(2009.3)
  • 中村真樹、杉浦健生、駒田陽子、難波一義、作田慶輔、林田健一、渡邊芽里、井上雄一:夜間睡眠時パニックの臨床的特徴、第29回日本精神科診断学会、東京(2009.10)
  • 中村真樹、井上雄一:シンポジウム「精神疾患と睡眠障害」‐パニック障害と睡眠障害‐第37回日本睡眠学会、東京

うつ状態

 ストレスなどから、寝付きが悪い、途中で目が覚める・いつもより早く目が覚めるといった不眠症状が続くと、心身が休まらず、その結果、意欲低下や注意力低下、イライラ感や不安が強まります。また、1997年にジョン・ホプキンズ大学の学生1,053人を対象とした研究では、学生時代に不眠を認めた人は不眠を認めなかった人に比べ、将来的に”うつ”を発症するリスクが高いことが報告されています(Am J Epidemiol 1997;146:105-114)。同じように、不規則な生活や夜型生活を続けて睡眠リズム覚醒障害を発症すると、日中に抑うつ症状を認めることが多いとされています。

 さらに、未治療の閉塞性睡眠時無呼吸症候群の方の20~45%は、眠っているときに呼吸が止まり熟睡できないため、その影響でうつ状態になると言われています(J Clin Psychiatry 2003;64:1195-1200)。

 また、”うつ”の症状として不眠があり、”うつ”の方の90%近くは、寝付けない・途中で目が覚めるといった不眠症状を認めるといわれています。治療により抑うつ気分が改善しても、不眠症状だけが残る”残遺不眠”があり、残遺不眠が続くと”うつ”の再発リスクが高まるとされていますので、”うつ”を再発させないためにも適切な不眠治療が重要です。

 このように、睡眠障害が原因で熟睡できないために”うつ状態”になることもあり、”うつ”のために不眠症状が生じることもあります。不眠・睡眠障害と”うつ状態”は密接に関連があるため、適切な診断・治療が大切です。

 

このような症状がある方はご相談ください

  • 気分が優れない、気が重い
  • 以前興味があった趣味などをする気が起きない
  • 仕事や勉強の能率が上がらない、集中できない
  • 些細なことで不安になる
  • 心身ともに疲れやすい
  • 疲れているのに眠れない

上記の症状が2週間以上続く場合にはご相談ください。

治療法

 抑うつ気分・意欲低下に対して、必要最小限の抗不安薬やSSRI・SNRI等の抗うつ薬で症状の軽減を行います。精神的疲労が強い場合は治療に専念するため、自宅療養を提案することもあります。抑うつ気分・意欲低下などの症状が軽減・改善しても、再発・再燃を予防するため、仕事や学校など日常生活に焦らず復帰するようアドバイスします。日常生活に戻り安定した状態が続いていることが確認できたら、再発・再燃に注意しつつ、ゆっくりと服薬量を減らしていきます(漸減療法)。
 症状が安定するまでは1〜2週ごとの通院になりますが、症状が改善・安定後は、月1回(4週ごと)の通院も可能です。

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